今日のゆうじろうSS

kagiya2008-04-25


「みーちゃん、おひさー!」
「あ、お久しぶり。らいちゃん」
「そっちの大学ってどんな感じ??」
「良いところだよ。構内もきれいだし、みんな勉強熱心だし」
「凄いなー。あたしの行ったとこなんて、男ばっかよ。女の子が少ないの何の。ポストみーちゃんになりそうな可愛い娘は見つかりそうに無いわね」
「そんなこと無いよー。私より可愛い子、絶対居るって」


大学に入って1ヶ月が経とうとしていた頃、あたしは久しぶりにみーちゃんと連絡をとった。
最近は忙しいの何の、高校とは全く違う授業制度に戸惑い、勉強はとたんに難しくなるし。
なんだかんだで大好きなPCから離れてもう2週間が過ぎようとしていたのだった。
でもまあ、やっぱりニコ厨のあたしには禁欲生活は長く続けられるものじゃなくて・・・
とうとう今日、久々に電源を投入したのだった。


「でね、学校からの連絡は全部掲示板で伝えられるのよ。BBSとかの電子掲示板じゃないよ?紙を張り出すあの掲示板」
掲示板って言って電子掲示板が思い浮かぶのはきっとらいちゃんくらいだと思うなぁ・・・」
「それが無茶苦茶不便だから、なんとかしてみんなで情報の共有を出来ないかなって考えたらさ・・・ほら、高校の時、クラスでメーリス作って『明日宿題忘れないようにね!』とかやってたじゃん。あれみたいなのを作ろうと思い立ったの」
「凄いね、らいちゃんは」


Webカメラとヘッドセットで、こうして時間を気にせず会話できるなんて、良い時代になったものね。
思わず『科学の力ってスゲー!』とか言いたくなりました。はい。


「でさ、学科のメンバーが全員集まるときに・・・まあ授業後だったんだけど、『こんなの作りませんかー?』って問いかけしてみたの。そしたらすっごく需要あってさ!『あんた勇者だよ』とまで言われたの!!」
「あれ、でもらいちゃんって、言い方悪いけどそんなに自分から何かしよう、って言い出すタイプじゃなかった気がするけど・・・」
「それをあたしも気にしててねー。環境が変わるなら良い機会だと思って、積極的になってみることにしたの。いゃあ、目立つのって結構気分良いわね」
「らいちゃんは自己顕示欲があったのに、いつも押し込んでたような感じだったもんね。きっとそのストレスが発散できたんだと思うよ」
「さすがあたしのみーちゃん!!細かいところまでよく見ててくれてたなんて嬉しいなぁー」
「そ、そんなぁ・・・」


あの事件以来、あたしとみーちゃん、それからさっちゃんの3人は結構変わったと思う。
あたしは前にも増して目標を強く目指すようになったし。
みーちゃんは言いたいことも言えるようになった。
さっちゃんは一人でも強く戦い抜く力を手に入れたと思う。

「あ、あたしの話ばっかりでごめん。みーちゃんの話も聞かせてよ!」
「うん、私のところでは大学からの掲示は全部ネットで・・・」
「うわあああああん!テラウラヤマシス」
「でもね、とってもたばこ臭いんだ」
「ふーん、臭いのかぁ」
「何故か知らないけど、建物内・指定場所以外禁煙なのに、建物の入り口に喫煙所が置かれてるの」
「ありゃりゃ、完全に分煙政策間違ってますな」
「そう。それで建物の中まで臭ってきてね・・・」
「あー、それはご愁傷様だわ。抗議文書とか出した?」
「もうちょっと人を集めてからにしようと思ってるの。同じ学科に、いつも周りに人が絶えないような人気者の人が居てね。その人を味方に出来ないかなーって」
「みーちゃんもなかなか策士ですのぅ」


ちょっとみーちゃんが腹黒くなっちゃったけど、超純粋そうな見た目とのギャップがまた良い訳で・・・
前はツンデレとか今一よく分からなかったけど、今ならギャップ萌えのその感覚が理解できそうな気がする。


「あ、ごめん。お母さんが呼んでるからまた今度ね」
「りょーかい。じゃねー」
「うん、バイバイ」


みーちゃん、変わりがないようで何よりでした。
今度夏休みに入ったら、プールにでも誘ってみようかな。
積もる話はたくさんある。もちろん話すだけが目的じゃないけど・・・
プールを(鼻血で)真っ赤にしないように気をつけないとね。


そういえば


「ゆうじろうともご無沙汰だなぁ・・・」


高校時代、図書館司書室に置かれていたパンダのぬいぐるみ。ゆうじろうと言う名前が付いていた。
あたしはそのゆうじろうが大好きだったのだ。


「今度先生に挨拶に行くとき写真撮ろっと!」


私設ゆうじろうギャラリー(ただのフォルダ)を開く。
いつまでも変わらない、ゆうじろうとあたしの思い出がそこにあった。


「・・・・・・・さぁて、単位取りに行きますか・・・レポート打たにゃぁ・・・」


あたしはようやく、重いマウスポインタを動かしてWordを起動した。


文中に出てくる「事件」については、それで一本長めのやつを書きたいと思っています。