今日のゆうじろうSS

kagiya2008-01-21


『明けましておめでとうございます。
本年もどうぞ、よろしくお願いいたします』


ちょっとびっくりした。
だってメッセで


『あけおめ!』


って送ったら、こう返ってきたんだもの。
さすがみーちゃん。礼儀正しい。


それに比べてこっちはどうよ。
年明け初めのメールの内容が


ネットラジオ配信っていうのやってみたいんだけど、どーすりゃいーの??』


新年の挨拶はどうした。
しかも届いたの1月2日だし。いくら何でも日付間違えてる、なんて事は無かろうな。


『・・・って事があってね』
『さっちゃんらしくて良いじゃない』
『砕けた挨拶で良いから、新年の挨拶くらいしなさいよ、って思うのよ』
『あ、ごめん。お父さんがはがきソフト使うからって』
『了解。ノシ』
『じゃぁね』


みーちゃんの表示がオフラインに切り替わる。
さぁて、今日は羽を伸ばすことにしてるのだ。イラストサイト巡回くらいはせねば。
と、ブラウザを起動している途中にメッセのウィンドウが。途端に処理が重くなる。
このカラーリングは・・・


『何?1日遅れの新年の挨拶?』
『あ、そうか。もう年明けてたんだ
あけおめことよろ』
『もしかして年明けてたことに気づいてなかったの?』
『最近いくら寝ても足りなくてさ』
『寝過ぎよ』


まさかのまさか。
さっちゃんは本当に24時間寝正月をやってしまったのか。


『それだけ寝ればさぞかし良い夢が見られたでしょうね』
『何言ってんの。悪夢ばっか
なんかよく分かんない機械に追いかけられる夢を見たよ』
『じゃあ何で寝てるの
起きれば夢見ないじゃない』
『そう言うわけにも行かないんだよ
まぁ色々あるんだわ、私にも』


何が色々なんだろう。


『でさ
ネットラジオ配信ってどうやるの
おせーて』
『ググれ
以上』
『ググったけど、何をどうすれば良いのか良くわかんね』
『ならあきらめるのね』
『そう言わずに頼むよ〜
リモートデスクトップだっけ。あれ使えば遠隔操作で、こっちのPCいじれるだろ?
それでやってよ』
『報酬は?』
『・・・』
『・・・ ←だけ送ってくるな』
『じゃあ、天ちゃんの好きそうな水着写真5MB分』
『乗った』


こういう時はギブアンドテイクだ。
で、何故「あたしの好きそうな『水着写真』」が報酬なのか。
それはあたしが可愛いもの好きだからだ。


「可愛い」と一言に言っても色々ある。
たとえば、普通に言われる「可愛い」(あたしは『純可愛い』と呼んでいる)は、ぬいぐるみなどがその例。そういうのは抱きしめたくて堪らない。
それから「カッコかわいい」も好きだ。町中でそう言うファッションをしている人を見ると、思わず服が欲しくなる。
「エロかわいい」も好き。単なるエロは好きじゃない。
最近のビーチバレーなんかは最たる物だろう。見ててときめきまくりだ。
「キモかわいい」は無いなぁ・・・あれは好かない。
とにかくそう言うわけで、エロかわいい水着写真をこっそり集めていたりする。


『ソフトは集めてあげるからインストール位は自分でしなさい』
『うぃ』
『インストールする順番はこのページに書いてある通りだから
それだけ出来れば後は簡単でしょ』
『サンキュー
助かったわ
またわかんなくなったらメッセするから』
『報酬』
『Zipで固める?』
『固めて』


さっちゃんも少しはPCに詳しくなってきたみたい。
ファイル数が多ければアーカイブにして転送するのは、Unix時代から常識だったはずだ。


『ほい』
『サンキュー』


さーてっと、中身は・・・


『はっきり言うわ
半分はハズレね』
『え、マジで』
『男が写真に入ってちゃ、それだけで台無しよ』
『それくらい別に良いだろ』
『駄目。あたし男は好きじゃないから』
『ふーん』
『あと半分ぐらいはもう持ってる写真だったわ』
『うそぉ』
『と言うわけで
あと3MB分位寄越しなさい』
『無茶苦茶言うなぁ
写真で5MBってだけで重労働なの知ってるだろ
じゃあいつも画像収集に使ってるページ教えるから自分で取ってきてよ』
『知らないサイトだったらそれで勘弁してあげる』
『サイトって何?』
『さっちゃんが言う「ページ」の概念の正式名称
正しい「ページ」って言うのは、サイトの中にある各々のHTMLファイルのことよ』
『もう全く訳がわからない。誰か分かる奴が居たらここに来い。そして俺に説明しろ!』
『してあげよっか』
『勘弁してください』


そんなこんなでいくつかサイトを教えて貰う。
半分は知っているサイトだったが、知らないURLを開いてみるといかがわしいサイトばかりだった。


『いつもこういうサイト巡りしてるわけ?』
『そうだけど』
『やっぱオヤジ入ってるわね、あんた』
『別に良いじゃん
女の子って可愛いし』
『それは激しく同意するけど・・・
こういうのは好かないなぁ』
『趣味は人によりけりだって
天ちゃんだって水着写真っていっても大体がスクール水着じゃん』
『だってあれが一番可愛いんだもの』
『そういう感性がみんな違う訳よ』


そう言われれば納得できるかも・・・


『まあ何はともあれ今年もよろしく』
『よろしく』
『あ、そーだ
今度みーちゃんのスク水写真見せたげよっか』
『嘘っ!!あるの?!』
『嘘だよ』
『期待させておきやがって』
『多分ホントに見せたら天ちゃんの鼻血が止まらないだろうね』
『冗談じゃなくて失血死するかも』
『じゃあそろそろ親が呼んでるから』
『ノシ』
『のしって何?』
『手を振ってるように見えるでしょ?』
『おお、ホントだ
ノシ』


メッセのウィンドウを閉じる。
いつも見に行くイラストサイトの巡回も終わり、プログラミングの解説サイトでも見に行こうかと思ったが、時間がかかりそうなので止めた。
余り長時間PCやってると目にクる。
これだけPCやってて裸眼で生活できるのだから、それだけで儲け物だろう。
代わりに、愛機W-zero3の写真整理をすることにした。
去年はゆうじろうの写真をたくさん撮った。


「これ可愛いなぁ。あ、こっちも・・・」
いつも眺めていたい写真は端末に残し、そうでない写真も永久保存のためPCに移しておく。
ある程度数が貯まったらCDに焼こうかな。


「今年もよろしくね、ゆうじろうっ!」


画面をつつきながら、新年の挨拶。
司書の先生には年賀状を出したが、ゆうじろうにはちょっと出せない。
まだ学校は開いていないから、登校できるようになったら図書館に行って抱きしめてあげよう。


「相変わらずキミは可愛いなぁ〜」


端から見たら即、怪しい人認定されてしまいそうなくらい表情筋を弛緩させながら、あたしはしばらく、写真に写ったゆうじろうを眺めていた。


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