こなかがSS かがみのツインテール編

「おっす」
「あー、かがみ、おはy・・・!?」
「どうした?」


振り返ってかがみを見ると・・・


「かがみ・・・髪・・・」
「ああ、最近うっとうしくなって来ちゃってさ。切っちゃったのよ」


ツインテールでなくなったかがみの姿がありました。





「という夢を見たんだけど・・・」
「何よその夢」


昼休み。今朝見た夢をかがみに話してみた。


「やっぱりさ、かがみはツインテールじゃないと『かがみ』って感じがしないよ」
「なぁ、その『ツイン=私』みたいな発想止めないか?」
「でも、髪短くしたお姉ちゃんなんて考えられないかな」
「そう言えば私も、ツインテールか、髪を下ろしたかがみさんしか見たことがありません」
「みゆきまで・・・」


つかさもみゆきさんも同意見みたい。やはり『ツインテール=かがみ』の図式は間違っていなかったのだ!


「それにさ・・・ショートヘアのかがみとか、見たとき喪失感が炸裂したよ。バイトでどうにかなるレベルじゃないよ、あれは」
「どんだけー・・・」
「だからさ、詰まるところ、私はかがみには今のかがみのまま居て欲しいかな、髪型も」
「ちょっ!・・・何よそんな・・・言われなくたって私は私よ」


そっぽを向いて髪の先をいじり出すかがみ。
何でかな・・・私には、そのときのかがみが


とても喜んでいるように見えた。





「もしもし、かがみ?」
『何?何か用?』


電話越しに聞こえるかがみの声。夕食を作る合間、私はかがみに電話をかけていた。
今日の夕飯はカレー。結構、炒めてるだけ、とかそういう間は耳と口が暇なのだ。
近くに電話の子機を置いて、スピーカーフォンの機能を使う設定にする。


「やっぱり髪型変えたりしないよね?」
『しないってば』
「・・・良かった」
『はぁ?』
「なんかね、夢でかがみを見たとき・・・実は喪失感とかじゃなくて、すっごく寂しかったんだ」


本当の話。
夢の内容ははっきりと覚えている。


「私がバス停に立ってたら、かがみが後ろから声かけてきてさ。振り向いたらショートヘアのかがみが居て」
『つかさは?』
「居なかった」
『・・・ふーん、それで?』
「すっごいショックだった。かがみが違う人みたいで・・・思わず泣き出しちゃった」
『・・・泣くか?普通』
「それが泣いちゃったんだなー。でさ・・・」


鍋に水を入れる。次に灰汁が出てくるまで、サラダの用意だ。


「かがみに泣きついて・・・『元の髪に戻して』って泣きじゃくっちゃったヨ」
『・・・』
「そしたらさ、かがみが、優しく私の頭を撫でてくれたんだ・・・ぐずっ・・・『ごめんね』って・・・ん・・・言ってくれた・・・」
『ちょ、ちょっと何かあったの?!泣いてるの?!』
「うん、大丈夫・・・顔を上げたら・・・いつも通りにツインテールのかがみが・・・うぐっ」
『・・・』
「ごめん、かがみ・・・やっぱり・・・やっぱり私・・・この気持ちに嘘つけないよ・・・私ね、かがみの事好きなんだ・・・・・・いくら言葉尽くしても言い表せないぐらいね・・・好き・・・なんだ・・・愛、してる・・・」
『こなた・・・』
「ごめん、許して・・・私、面と向かって言えなかった・・・それに、同性の私に好かれても・・・かがみ困るだけだよね・・・」


お鍋がグツグツと音を立てている。
止めなきゃ、と思うのに、私の体は意に反してレタスを抱えたまましゃがみ込んでしまった。


「ごめん・・・ごめんね・・・」
『バカ』


怒られたのかと思った。
嫌われたのかと思った。
そりゃそうだ。同性を好きなるなんて、普通どうかしてる。


『謝るんじゃない』
「?」
『あんたは思ってることがちゃんと言えたでしょ?十分じゃない。世の中、言いたくても言えない事抱えたままの人だって多いのにさ』
「・・・」
『少なくとも、その言いたいことを言わないで居た私よりよっぽど勇気あるわよ。それなのにあんたが謝ったりしたら、私の立つ瀬がなくなるじゃない』
「何でかなぁ・・・」
『え?』
「何でかなぁ、かがみの声が・・・泣くの我慢してるみたいに聞こえる・・・」
『ば、ばかっ。な、泣いてなんか・・・泣いてなんか・・・・・・ごめん、泣いてた』


受話器の向こうで、紙のこすれる音がした。


『今だから言うわよ。良い?一度しか言わないから良く聞きなさい』
「うん」
『好きよ、私も。こなたの事』
「!!」


完全に涙腺が決壊した。多分、全私が号泣してる。


『やっぱりね、今まで言えなかった。でも、こなたがそこまで私のこと想ってくれてるんだから・・・今なら言える。何回でも言える。好きよ』
「くぁ・・・かがみ〜!!」
『ちょ、ちょっと何よ!?』


辛うじて動員できた理性で鍋の火を止め、それで限界を迎えた理性は『レタスを放り投げて電話機に向かう』という選択肢の前半部分も削除することが出来なかった。


「うわぁぁぁん」
『・・・よしよし』






「で、でさ・・・その後・・・どうしたの?」
「いやー、カレーは普段通りに出来たんだけど、潰れてしなびたレタスのサラダと、目の下腫らした私にお父さんが血相変えちゃってさ」
「な、何て言うか・・・大変だったわね・・・」


翌日、バス停でかがみと会った。ただしツインの。


「そう言えばつかさは?」
「ああ、また寝坊してたから起こすだけ起こして、私だけ先に家出てきたのよ」
「ふーん」
「・・・き、昨日は・・・うん。・・・何て言えば良いんだろう・・・?」
「まぁ、アレだね」
「?」
「愛してるよ、かがみん」
「っ!・・・わ、私だって・・・愛してるんだから」
「かがみ、顔真っ赤ー♪」
「な!あんただって赤いじゃないのよ!!」
「そうそう、こういうかがみ」
「は?」
「こういうかがみにね、私惚れたんだと思うな」
「・・・嬉しいこと言ってくれるじゃない」
「じゃあ」


おもむろにかがみの手を取る。
かがみは



その手をそっと、何も言わずに優しく握り返してくれた。


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