今日のゆうじろうSS
今日のあたしは上機嫌だ。
何てったって定期試験最終日!明日は休みだヒャッホウぅ!
みーちゃんの顔がしばらく見られないけど・・・その辺はこの前あげたWEBカメラで解決。みーちゃんは、大抵夜9〜11時頃にメッセでオンになっている。
「今晩こそゆっくり寝るぞー!」
「なんか元気だね、らいちゃん」
「いやそりゃもう終わらない問題集の答え写すのに徹夜したもんだから気分がハイな訳で」
「は、早口で解らないよ・・・」
お肌のことは、気になるけど気にしなーい。
別に成長ホルモン出てもしょうがなーい。あ、でも女性ホルモンは出て欲しいかも。
「そんな訳で今日は帰ったら寝るわ!」
「宣言しなくても、個人の自由だよ。それは」
「それにしてもその元気は無いでしょーよ」
「あ、さっちゃん。おはよう」
「なんか景気悪そうな顔してるわねー」
またあたしの後ろからさっちゃんがやってきた。さっちゃんは登場するとき、いつもあたしの背後からだ。何かあるのだろうか。
「おはよーさん、お二人とも。いやぁ、お仲がよろしいようで・・・」
「何言ってんのよ!みーちゃんはあたしの彼女・・・」
「らいちゃん、素面だよ?!お酒入ってないのにそう言うこと・・・」
お酒なんて入ってませんとも!ええ、お酒は嫌いです。あのアルコール臭が嫌で嫌で・・・
「良いよねー。天ちゃんは徹夜するとハイになってさ。私はもう眠くて・・・ふぁー」
大欠伸をかますさっちゃん。普段の陸上部で培った体力はどこへやら、この人は寝ないと体が持たないらしい。
「眠そうだね・・・」
「うーん、眠いの。じゃあ私帰って寝るから・・・お休み」
「お、お休みー」
「達者でなー!」
「うう、らいちゃんとさっちゃんが反対になったみたい・・・」
「くぉんにちわー!!」
「お、おおっ。びっくりしたぁー。どうしたんですかそんなにハイテンションで」
「徹夜明けなんですよはっはっはー」
司書室に飛び込むなり元気良く挨拶をかましたあたしは、いつもの通りゆうじろうを探しにかかる。
まだ午前10時。冬の日差しが一方向からしか入ってこない司書室に、眩い光と影のコントラストが出来ていた。
何だかキレイだなぁ・・・
そう思いながら、寝そべっていたゆうじろうをソファから取り上げる。
ソファーに腰掛けてみると、日の当たる部分だけ、すぐに髪が熱くなった。
「良い天気ですねー」
「そうですねー」
ぽかぽか陽気でこのまま眠ってしまいそうな・・・
はっ、いかんいかん。ここで寝たら、家の布団でのんびり、というあたしのプランがオジャンになってしまう。
代わりにゆうじろうに寝て貰おうか。
抱き抱えていたゆうじろうを机の上に。ダレている姿勢がデフォルトなだけあって、いかにもひなたぼっこが気持ちよさそうなパンダになっている。
少し距離を置いて、目を細くして眺めてみた。
「かわいー」
「あ、今度はひなたぼっこですか?」
「はい。気持ちよさそうですよねー」
部屋の暖かさも手伝って、立ったままでも眠れそうな程の眠気が押し寄せてくる。
「ちわーっ。あれ?何やってんの、天ちゃん?」
「さっ、さぶい!閉めてぇ!!」
王さんの訪問が、私を現実に一気に引き戻した。
この季節の屋外なんて人間が居るべき空間ではありませんよ。まったくもう。
一瞬ドア開けただけでこの寒さ。実は地球は温暖化してないんじゃないかと疑いたくもなる。
「携帯構えて何してんの?」
「いや、ゆうじろうを・・・あれ?ボケた」
ピンぼけしたみたいな写真が、ディスプレイに映っていた。
あたしの手はカメラを持つと、何故か小刻みに震えるのだ。
「私が撮ってあげようか」
「お願いします。神様、王様、仏様」
「何それ」
「ジャイアンの『神様、俺様、仏様』のパクリ」
あたしが改造を施したW-zero3は一切シャッター音を立てず、ゆうじろうの後ろ姿をjpegファイルに収めた。
「あれ?今これ、『パシャ』とか言わなかったよね」
「言わないけど」
「もしかしてシャッター音消した?むしろ消せるの?」
「まぁ一応」
「じゃあ盗撮とかし放題じゃん」
「ちょっ、あたしが何を盗撮すると・・・?」
「女子更衣室とか?」
「何で?!」
「だってほら、天ちゃんレズっぽいし・・・」
「いや、多分それは誤解」
「じゃあ時々廊下で見かける、あの天ちゃんに抱きつかれてる女の子は・・・」
「あれは彼女」
「ほらやっぱりレズ・・・」
「そうなるの?!」
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