今日のゆうじろうSS

kagiya2007-12-08


一応鬱から復活しました。
リアルで「死ぬなよ」「大丈夫か」など、声をかけてくださった方々。有り難うございます。


「うわーん!聞いてくれゆうじろうっ!!」
「どうしたの天ちゃん」


放課後、学校に置いている私物総撤去のため、荷物を置いておいた司書室にあたしは飛び込んだ。
そこには同じく荷物を運び込む小西の姿があった。


政経のテストさ、『持ち込み可』だったじゃん」
「うん」
「で、今日『通信機器持ち込み禁止』の張り紙が出たから、先生に『W-zero3W-simさえ抜いちゃえば普通のPDAで、通信が出来ないので、持ち込み可ですよね』って聞きに言ったらさぁ」
「うん」
「『じゃあ普通の電卓で良いじゃない。誤解を招かないようにも、それは使わない方が良いんじゃない?』って言われたー」


事実上の使用禁止令である。
つい先日、ExcleMobileで使えるように、テスト範囲の計算式などを一式打ち込んだばかりだったからに、あたしの喪失感は計り知れなかった。


「それは災難だったね。この前一生懸命打ち込んでたのに」
「でしょ?!あ、このBook見せて『あたしのテスト勉強です』って言い張れば良かった・・・」
「残念」


今更言いに行っても門前払いを食うだろう。もう済んでしまったことだ。
今度『こんな物まで用意した後だったのにっ』って言って恨み言言ってやる。


「ところで天ちゃん、サンドイッチ要る?」
「財務諸表にデータ入れれば資本回転率まで求めてくれるやつ作ったのに・・・え?」
「サンドイッチ。要る?」
「貰える物は貰う」


ぷりぷりしながら、小西の差し出してくれたサンドイッチを受け取る。
ハムサンドとツナサンドだった。気分でハムサンドを選び、ラップを取って頬張る。


「・・・おいしいね、これ」
「でしょう」


半分に切ったイングリッシュマフィンに、軽くバターが塗られていて、これでもかとハムが挟まれている。
シンプルながら、絶妙な味わいだった。


「私謹製だから」


小西の家は大金持ちだ。時々「所持金が3万円しかない」など平気で言う。
あたしの所持金は400円もないっての。
だからハムも高級なものだろうし、ケチケチしないハムの挟み方も彼の家だから出来ることだろう。
だからこそ本気で美味しかった。


「や、これは美味しいわ。うん、ホント」
「よく食べるね」


気づくと、積んであったハムサンド8個の内3つを平らげていた。


「良いの良いの。あたし食べても体に反映されること殆ど無いから。あ、そっか。あたしが食べたら小西の分無くなっちゃうのか」


相変わらず他人への配慮が後回しになる、自分の思考回路を呪う。


「今日は3時間目からの授業だったから、あんまりお腹減ってないんだよね。それより体育のソフトボールでランニングホームランなんか打っちゃったから、体中痛くて・・・」
「お、お大事に」
「そこで私は思ったね。素人の卓球ほど疲れないスポーツは無いと。プロなら疲れるんだろうけど」
「確かに」


すると閲覧室の側のドアが開いた。


「おっす」
「あ、王さん」


成績優秀、芸術センス抜群で、あたし達と同じく図書館常連の王さん。どこかボーイッシュな雰囲気もあって、いろんな意味で超人的印象を与えている。
特に絵に関しては、あたしと大体同時期に描き始めた筈なのにとんでもなく上手い。
彼女曰く
「どれだけ忙しくても一日一枚位は絵描けない?」
とのこと。
この超人は時間を操れるらしい。
あたしなんか一週間に一枚程度だって。


「おっ、旨そうじゃん。何?何サンド?」
「ハムサンドとツナサンド。王さんも食べる?」
「食べる食べる」


ハムサンドに手を伸ばして、王さんも一口。


「旨いなこれ」
「だよね」
「いやぁ、持ってきた甲斐があったね」
「あ、聞いてよ王さん。政経のでさぁ・・・」


おもむろに愚痴り始めるあたし。一通り聞いてくれた王さんは


「しょうがないんじゃない?」


と一言。


「ほらほら、見てよ!この辺の数値入れればこうやって・・・」


飽きたらず、zero3で説明を続ける。


「良くできてるなぁ。でも無駄骨になっちゃったんでしょ」
「うん・・・」
「ま、残念だったねってことで」
「しょぼーん」


うつむくと、ふと机の上のゆうじろうが目に入った。
なんと無しにW-zero3をゆうじろうの前に置いてみる。
うん。良い感じ。
今度はツナサンドに手を伸ばしていた、王さんの袖を引っ張る。


「見てみて」
「何?」
「仕事中のゆうじろう」
「おお、まじめに仕事してるっぽい」
「よね。よし、早速写メを・・・」
「撮るんだ?」
「ああっ、zero3使ってるからカメラがっ」
「天ちゃん、私の携帯貸そうか?」


助け舟を出してくれたのは小西だった。


「有り難うっ!何か今日はサンドイッチ貰ったり携帯貸して貰ったり、迷惑かけっぱなしだね」
「いいてってこと」
「じゃ、遠慮なく」


ぴろりーん


いつもと違うシャッター音。
いつもと変わらず、今日もゆうじろうは可愛かった。


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ゆうじろうの小道具や、ポーズなどの案も受け付けたいと思いますが・・・
あと4日しか登校日がないので、ありましたら急ぎ足でお願いします。