こなかがSS ハロウィン編

「ねぇ、明日だよね。ハロウィンって」
「そうだけど、それがどうかしたの?」


10月30日。しかしあと6時間で日付が変わる時間に、つかさが私の部屋に尋ねてきた。


「明日『トリックオアトリート』って言ってお菓子貰ったりするから、私も何か用意しないとって思って」
「あんたのクラスはそう言うのやるんだー。私のクラスではそういうの聞いてないし」


多分日下部が峰岸にねだるくらいだろう。クラス全体でそんなことは起きないと思う。
でも・・・


「んー、じゃあ私も一応用意するか」
「じゃあ私がクッキー焼くよ!お姉ちゃんの分も用意するね」
「じゃあ頼むわ」


ハロウィンかぁ・・・10月ももう終わりか・・・
って、勉強しないとマズいじゃない!





「おーっす」
「おはよう、こなちゃん」
「あー、おはよー」


明くる日。私はつかさに作って貰ったクッキーを持って登校した。


「じゃあ、つかさ。早速だけど『トリックオアトリート』。お菓子ちょうだい」
「うん、良いよ」
「やたー、つかさのクッキー美味しいんだよねー」


つかさが、小分けにしたクッキーの袋を取り出す。
こなたは早速袋を開けて、はもはもと食べ始めた。
って、そろそろバス来るぞ。


「かがみは、・・・多分何も用意してないよね。ウチのクラスだけだし」
「なんか失礼な言い方ね。つかさに頼んで用意して貰ったわよ」


はい、と袋を突き出す。
一番大きなクッキーだ。
今朝つかさに味見をさせて貰ったが、この上なく美味しかった。
つかさも、今までで一番上手くできた、と喜んでいた。


「おおー、かがみが私に何かくれるとは・・・」
「何よその目は」


こなたの目が、意外だ、と言わんばかりに光っている。


「じゃあ私も何かあげようかナ」
「あんたがこういうイベントの為に何か用意してくるなんて、そっちの方が意外だわ」
「まあまあ。じゃあ『トリックオアトリート』って言ってよ」
「相変わらず発音変だな・・・じゃあはい。『trick or treat』」


しかし何も起こらない。バスは来た。


「・・・何で突っ立ってるだけなのよ」
「イタズラして良いよ?」
「ハァ?!じゃあ」
「うん、用意なんてしてないよ」
「こなたぁ〜!!」


私はバスに逃げ込むこなたを追った。
定期をタッチし、奥の方へ逃げ込むこなたを確認する。
って言ってもそんなに広くもないけど。


「このぉ」


バスの一番奥、後部座席の一番右端。
捕まえた。
すかさずグリグリをかます


「あー、いーだぃいたい」
「何もくれないじゃないのよ!あんたはこう何時だって・・・」
「・・・かがみ?」
「・・・何でだろ、何で泣いてんだろ私・・・」


何で・・・何で・・・?
何時だって何もくれない。
それで良かった。
だってこなたは私に色んな表情を見せてくれるじゃないか。その長い髪を使って、色々な髪型を見せてくれるじゃないか。
それが私に幸せをくれる。
そんなものじゃない。もっと、もっとたくさん・・・・・・


「ご、ごめんかがみ・・・私」
「違う。こなたのせいじゃないのよ・・・」


うつむくこなたの、サラサラの長髪を指で梳く。
指通りの良い髪もまた、私に幸せをくれる・・・


ああ、そうか。
何で今まで気づかなかったのだろう。
私は






こなたが好きだったのか。







「・・・罪な奴め」
「何?何か言った?」
「何でも無いわよ」


制服の袖で軽く涙を拭う。
気づいたこの気持ちは、嘘偽りの無いものだろう。
これが恋愛感情のそれかどうかは分からないけど・・・
私はこなたに幸せを貰ってる。
それでいいじゃないか。


「イタズラして良いのよね?」
「え?う、うん」
「じゃあ・・・」
「え、あ、ぅお、ちょ、ちょ、っま、ひえー」


バスの奥の隅の席で。
私はこなたをくすぐり倒した。






「ひどいよ、かがみー・・・」
「あんたがあんな事言うからでしょ?そう言うときは容赦しないわよ」


バス停から学校までは距離が近い。
同じ制服が一つの建物へ吸い込まれていった。


「じゃあ仕返しだぃ」
「へ?」


ぴとっ


こなたが私の腰に抱きついた。
みるみる顔が熱くなって行く。


「ちょ、ちょっと!ここドコだと思ってるのよ!!」
「んー、学校の前」
「分かってるなら」
「これくらい女子のスキンシップとしては当たり前だよ」
「お前の当たり前はギャルゲーの知識だろうが。止めなさいよ、恥ずかしいから・・・」
「じゃあここじゃなきゃ良い訳?」
「・・・・・・・・・・・・ぅん」
「素直で結構」


こなたが私から離れる。
今まで感じていた体温が突然離れ、少しの寒気に襲われる。
自然と体が震えて、鳥肌が立った。
そこをこなたに感づかれたのか


「もう、かがみんはさびしんぼだなぁ」
「あ、あんたのせいでこうなったんだから・・・」
「うん」
「じゃあ、放課後空いてる?こなたの家に行きたい」
「いいよ。かがみなら何時だってウェルカムだよ」
「・・・・・・ありがと」


自然とこなたに伸ばした手が、フラフラと揺れる手と重なって。
何と無しに手を繋ぎ合った二人は、仮装祭(ハロウィンパーティー)で仮面を外し、お互いの素顔に気づくのだ。
祭りはまだ終わらない。


「あ、世界史の宿題忘れた!」
「何やってんのよ、もう!」










(わー、あの惚れ薬結構効くみたい。よし、たっぷり混ぜこんだこのクッキーをゆきちゃんに・・・)
「どうかされたんですか?つかささん。先ほどから立ち尽くしていらっしゃいますが・・・」
「ひゃっ、ゆ、ゆきちゃん、おはらっきー!」
「はい、お早うございます」
「きょ、今日はハロウィンだよね!ゆきちゃん、ハロウィンの決まり言葉って何て言うんだっけ?!」
「『trick or treat』ですか?」
「そう、それ!はい、クッキー!」
「わぁ、有り難うございます。お昼ご飯の時に頂いてよろしいでしょうか」
「い、何時食べて貰ってもオッケーだよ!」
「では、お昼の時に食べさせていただきますね」
「う、うん!」


リクエストがあったので書いてみました。
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