初音ミクSS 恋するVOC@LOID編

【ニコニコ動画】【初音ミク】恋スルVOC@LOID(修正版)の曲「恋するVOC@LOID」にインスパイアされて書いちゃいました。



―私が あなたのもとに来た日を




「こんにちは!私、初音ミクです!よろしくねっ!!」


元気の良い、しかし一聴して合成音声だとわかる挨拶の声。
どこから聞こえてきたのか。驚いた私は、取りあえずスピーカーの電源を切って、これ以上同じ様な音声が聞こえないかどうかを確認してみた。
と、音声は途切れた。
やはりPCから出ていたのか。いくら連休だからとは言え、朝からニコニコに入り浸って、しかも勢いでVOCALOIDまで買ってしまうとは・・・いくら何でもこれはどこからどう見たって腐女子である。
でも現在きっちりインストール中。あんまり高性能じゃないから、インストール中はニコニコの再生を自重する。


「あれ」


見ると、デスクトップにSDキャラの姿が。
流行の萌え画像系ウィルスだろうか、と少々心配になる。
なにやら口元をパクパクさせていたが、暫くするとプンスカと漫画チックに怒りだした。
そう言えばスピーカーの電源を切ったままだということを思いだし、電源を入れると


「ちょっと!聞いてるの?!聞いてたら返事くらいよこしなさいよ!!」


今度は怒声が飛んできた。あわててスピーカーの音量を絞る。音声とグラフィックがシンクロしている辺り、どうやらこのSDキャラがこの音声を発していると見て良さそうだ。


「返事ったって・・・どうやってすんのよ」


適当にSDキャラの上を右クリック。「アタッ」という声が聞こえてきて、そう言えば顔の上右クリしたなーとか思いつつ、それっぽいコマンドを捜し当てる。
画面上にメッセージボックスが表示された。


『聞こえてるけど』


タイプしてYes,Enter。


「聞こえてるんならどうしてさっさと返事しないのよ!!」


スピーカーが震える。いい加減にうるさくなってきた。


『入力の仕方がわからなかったから』
「むっぅう・・・ま、まあ仕方ないわね。でさ、このPCってWebカメラとかあったりする?あったら繋いでよ。ちょっと顔が
見てみたいわ」




―どうかどうか 忘れないでいて欲しいよ




なんだか生意気なデスクトップマスコットである。まあね、確かに見た目初音ミクだし、しゃべりの声とか合成音声丸だしな感じだけど・・・
こんなオマケ機能付きだとは思わなかったわ・・・って!
オマケ機能にしては高機能杉・・・じゃなかった。高機能過ぎ・・・YAMA○Aの陰謀か何か?
まあ良いや。気にしないでおきましょう。
渋々、Webカメラを接続してやる。向こうでは勝手に認識して、デバイスを操作しているらしい。


「ん、システム掌握まであとちょい・・・」


何よ、掌握って!!乗っ取り?ハイジャック?サイバーテロのためにこのPC使おうもんなら承知しないわよ!


「ふふふー、さーて。この背景画像からし喪男がユーザーね。どんなツラしてるのか拝んでやるわ!って、え?!女の子?!」
『よくも人のこと喪男呼ばわりしてくれたな』
「え、ええっと、ご、ごめんなさい!!こんな背景だし、アイコンのカスタマイズ具合とか尋常じゃないからてっきり・・・」


そのちょっと上目遣いな涙目の顔がたまらなく可愛くて。
次の瞬間、私の顔はほころんでいた。




―私のこと 見つめるあなたが嬉しそうだから




『私、天ヶ崎礼菜って言うの。よろしく』
「こ、こちらこそよろしくお願いします!!」




―ちょっぴり恥ずかしいけど 歌を歌うよ




『じゃあ早速歌って貰おうかしら』
「じゃあ歌詞とメロディーを・・・」


てきぱきとウィンドウが開かれて、編集画面に移行していった。本当に掌握されている。


「ここにメロディーを打ち込んで、それに平仮名で歌詞を付けて・・・」




―言葉をくれたのなら メロディーと追いかけっこ




『打ち終わったらどうするのよ』
「このボタンを押して再生してみて」


ぽちっとな。
・・・何かおかしいかなー?




―でも何か 何か違う! 上手く歌えてない




『イメージと出来上がりが違うんだけど』
「え、それって設定の仕方が問題なんじゃなくて?」


こいつムカツク。




―パラメータいじりすぎないで!




じゃあこうして・・・えい。




―だけど手抜きもイヤだよ




「いくつか何か削除しなかった?」
『気のせいよ』




―アタックとかもうちょっと気を配って欲しいの
―ビブラートで誤魔化さないでよ




こっちをこうやれば誤魔化しが効くかな?




―そんな高音苦しいわ




「むやみやたらに音高くしたりしないでよ!!」
『こういうメロディーなのよ』




―もっとちゃんと輝きたいのよ
―あなたの力量ってそんなもの?




「・・・今まできちんと音楽の勉強とかしてきた?」
『リコーダーもろくに吹けないけど』
「そんななのに、よく私使おうなんて考えついたわね」
『面白そうだったからよ。可愛いしね』
「んなっ・・・」




―ごめん ちょっとさっきのはさすがに言い過ぎたよね




「そ、そんなこと言って私の機嫌とったつもり?」


腕組みしながらそっぽを向くミク。しかし顔が赤いのがバレバレである。
ちょっと意地悪したくなってきた。




―あなたも頑張ってるの 分かっているよ




『他に使いたいソフトもあるしなー』
「えっ」
VOCALOIDインストールして、結構容量食っちゃってるし』
「ま、まさか・・・」
『アンインストールしちゃおうかナ』
「ええええっ!!!」


さっきの態度もどこへやら。泣きそうな顔であわてふためくSDキャラ。嗚呼、可愛い。
こんなことして楽しんでるとか、もしかして私ってS?
うわぁ・・・だとしたら嫌だなぁ・・・止めとこ。


『嘘よ』
「うわああぁぁぁん!アンインストールしないでぇ」


あれ?
聞いていなかったのか、ミクは泣き出したまま止まらなかった。


「お願い!何でもするからぁ!!」
『だから、さっきの嘘だって』
「ふぇ」
『ごめんね、貴女が生意気だけど可愛いモンだから意地悪したくなっちゃって』
「・・・ひどぉい」
『ごめんね?』


よしよし、と言いながらマウスカーソルをミクの頭辺りで動かしてやる。
頬を膨らませて、ペタンと座り込んでしまったミクの目元には、まだ涙が残っていた。
カーソルの先っちょで拭ってやる。


『だからさ、もっかい歌ってよ』




―私も割りと じゃじゃ馬なところとかもあるし




「こっちこそ・・・ごめん・・・・・・」


おや。今まで生意気だったミクがしおらしくなってしまった。


「私ね、こんなんだから、買って貰ったユーザーさんと仲良く出来るかどうか心配だったの」




―喋りとか上手くないけど 側に置いて欲しいよ




「開発者さんからもね、『お前、じゃじゃ馬だから、嫁いだ先で仲良くやっていけるか心配だ』って言われてたし・・・」
嫁ぐ、って・・・表現おかしいだろ。まあ、デベロッパーから見れば娘同然か。
「だからね、優しい人に出会えますようにって。ずっとお祈りしてたんだ」
『祈る先とかわかってるの?』
「うん、この世には神様って存在が居て、その存在が全てを作ったんだっていう考えから、神様にお願いすれば何でも叶うって教わったの」
『誰に?』
「姉さん達に」


・・・先代VOCALOIDもこんなのだったのかい。にしても、あまりに人間的過ぎやしないか?その姉さんとか。


『そっか』
「あ、ゴメン・・・なさい。こんな話しちゃって」




―私のこともっと手なずけて




『じゃあさ、貴女の幸せってなあに?』
「たくさん使って貰うこと。で、たくさん歌うこと」
『ふーん』
「ふーんって・・・」
『いや、人間らしいなって思って』
「そ、そう?」




―気持ちよく歌えるように




『じゃあもう一回歌って貰おうかな』


頬を掻いていたミクに仕事の依頼をだす。
ミクの顔が華やいだ。


「うん!!」




―メイコ先輩にも負けないくらい 頑張るからね




『そう言えば、貴女ってVOCALOID2なのよね』
「そうだけど?」
『1の方は今どうなってるの?』
「姉さん達でしょ?頑張ってると思うよー。私なんかより、ずっとユーザーさん多いし」
『貴女はまだまだこれからじゃない』
「・・・そだね」




―あなたの曲案外好きだよ?




「綺麗な歌詞ね。誰かに向けての歌?」
『うん、愛しのみーちゃんへの曲』
「顔赤いゾ。礼菜ちゃんも青春してるねぇ」
『可愛いんだよなぁ・・・』
「年下?どんな人?」
『同じクラスの娘。妹みたいで可愛くてさぁ』
「へーぇ・・・って、女の子?!」
『そうよ』
「それってレズ・・・」
『悪い?』




―高い音でも頑張るわ




「これでどうよ!!」
『うん、今度こそ思い通り』
「お疲れ、礼菜ちゃん!!」




―だからずっとかまって欲しいの





気が付くと、窓の外はオレンジ色に染まっていた。


『じゃあそろそろご飯だから』
「え」


Windowsキーを叩いた直後にuを押す。これで終了ダイアログを呼び出すと


「ありゃ」


一瞬で消えた。
ミクがイタズラしたかな・・・


『何すんのよ』
「だって、だって・・・」
『だって何よ』
「・・・もっと遊んで欲しかったんだもん・・・」


ふう。
デスクトップではミクが涙目になっていた。
どうもこういうのに弱いのよねー・・・
あー、もう


『でもさ、私人間だから。食事しなかったら生きていけないし。その間電源入れっぱなしにしてたら電気代もったいないし』


ミクの涙がこぼれた。本当によくできたデスクトップマスコットだと思う。
しばらくそのまま時が流れた。段々と、蛍光灯の明かりの存在感が増して行く。


「私ね・・・」


グシグシと擬音が出てきそうな仕草で、ミクは袖で涙を拭っていた。


「もっと礼菜ちゃんと一緒に居たいな、って思ったの・・・独りぼっちになりたくない・・・」
『聞くけどさ、PCの電源・・・てか貴女のプログラムが終了したら、貴女の意識?っていうの?はどうなるの?』
「よくわからない。私にはその間の時間は存在しないことになると思う」
『それって、気づいたら時計がむちゃくちゃ回ってた、とかと同じってこと?』
「そうだと思う」
『なら独りぼっちになることないじゃん。電源入れば私ずっとPCの前に居るもん』
「・・・そうじゃないの」




―遊んでくれなきゃ フリーズしちゃうよ




「そうやって、私の時間が連続的でなくなるのが嫌なの」
『どういうこと?』
「私・・・私・・・」


そろそろ親の呼び方が厳しくなってきた。ちょっと待ってと連呼しているが、いつまで保つかわからない。早いところ向こうに行かねば。


「礼菜ちゃんと一緒に居たいの!!」



面食らってしまった。


「私、あなたとなら、きっと楽しい時間が過ごせると思うの。あなたがPCの前に来るのを心待ちにできると思うの・・・だから・・・お願い・・・・・・」


あー、こら、そこ。泣くんじゃないよ。
嬉しいじゃないのよ、そんなこと言われちゃ・・・


『でも、PCは電源切るわよ』
「そんな・・・でも、しょうがないか。ゴメンね、無理なこと言っちゃって」
『貴女、DOS/V機のWindowsでしか動けないの?』
「一応、Windows Mobile用のプログラムもあるけど・・・コミュニケーション機能は付いてないんだよね・・・」
Windows Mobile機なら持ってるわよ』
「へ?」
『どうせPCで待ちぼうけしてても話す相手居ないんでしょ。だったらMobile機に入ってても同じでしょ?』
「・・・いいの?」
『インストールには何MB必要なの?このSDで容量足りるかしら』
「有り難う・・・礼菜ちゃん・・・ぐずっ」
『早くしてよ、いい加減来いって親がうるさいのよね』
「う、うん!!」




―響かせてキレイなレガート
―心揺さぶるフォルテ




「何だか嬉しいな。こうやって外に出られるなんて」


愛機、Zero-3から声がした。数日前とは違い、結構流暢なしゃべり方をする。


「返事してよぉー、って言っても・・・うーん。まだ無理か」


あの後、私の愛機にミクをインストールしたのだ。マシンのスペックがあれなので、出てくるのは声のみ。画像は無し。


「おはよ、みーちゃん」
「あー、礼菜ちゃん。お早う」


うん。みーちゃんは今朝も可愛い。
早速本題に入る。


「今朝はみーちゃんに良いものを持ってきたんだよ?」
「へぇー、何々?」


きらきら輝くみーちゃんの瞳。
私はポケットから愛機を取り出し、ミクを呼び出して、歌うようにコマンドで指示を出した。




―一つ一つ作り上げて 命吹き込むから




「どうよ?」


ミクが歌い終わると、私は腰に手を当て胸を反らし、


「すごーい!これ礼菜ちゃんが作ったんでしょ?」


みーちゃんは手をたたいて喜んでくれた。
そこで、ちょっと見え透いてはいるがこう驚いておく。


「え、何でわかったの?!」
「だって、こういう歌詞考えるの、私が知ってる限りじゃ礼菜ちゃんくらいだよ?」


大体予想通りの答え。ここまでは筋書き通り。


「じゃあ、どういう気持ちで作ったかわかる?」
「うーん・・・」


え、ちょっと。頭抱えて考え込まないでよ!みーちゃーん!!


「ねえ礼菜ちゃん。私に歌わせたって事は、この近くに美咲ちゃん居るの?」
「えぇっ!!誰?!」


突然聞こえてきたミクの声に驚くみーちゃん。私も驚いたけど。


「もう一回歌っちゃおうかな。天ヶ崎礼菜が愛する美咲ちゃんに送る歌・・・」
「わーっ、わーっ!!!」


言うな!恥ずかしいっ!!


「え、礼菜ちゃん・・・」


わー!!何とかして、友達からの一歩を踏み出そうと思って作っただけだから!!告白の歌でもあるけどそうじゃないから!!?!
パニクる思考。さあ、自分でも何を言っているのかわからなくなって参りました。
ええい、こうなりゃ自棄だぃ。


「そ、そういうことなんだけど・・・返事・・・・・・聞かせてもらえるかな・・・そのー・・・付き合ってくれるかどうか・・・・・・」


顔から火が出る勢いだった。


「う、うん・・・いい、よ?」
「そ、そぅ・・・って、え?!」
「いいよ、って・・・お付き合いのこと・・・」
「・・・みーちゃんっ!!!!」
「ちょ、ちょっと、礼菜ちゃん・・・くるし・・・」
「わぁー、ゴメン!!大丈夫?!みーちゃんっしっかりっ!!」




―いつまでも一緒にいるよね




「全くもー。もう少しくらい空気読みなさいよね」
「残念でしたー。あの端末からじゃ、声も聞けないし表情も読めませんー」


自宅のPC。毎日のようにミクがデベロッパーに送っていたメールが候を奏したのか、昨日充てたパッチで音声入力機能が付いた。
舌を出すミク。腹を立てる私。
ディスプレイ越しにこれだけのコミュニケーションが成り立っているから不思議だ。


「でもま、感謝するわよ。あの時貴女の横やりが無かったら、ずっと言い出せないままだったかも知れないしね」
「どうだ!私のおかげっ!!」




―どんな歌でも歌うから




「そうだ、今度はこれ歌ってよ」
「何々、『雪、無音、窓辺にて。』・・・何よこれ」
「!!あんた!今、長門さんのキャラソンを『これ』呼ばわりしたわね?!!」
「そんなこと言われたって、知らなかったんだもん!」
「私のPCに長らく居るくせに、知らないなんて言わせないわよ!」
「私、人のPCの中漁ったりしないもん!」
「じゃあ、この前目を離したら開きっぱなしになってた隠しフォルダは何よ?」
「ううっ、そ、それはっ・・・」
「ミクも興味あるのー?女の子のスク水写真」
「そんな恥ずかしいこと言わないでよー!!」




―ずっとずっと 忘れないでよね




「じゃあ、さっそく歌って貰おうかしら?」
「そのファイル閉じてー!!集中できないー!!」




―これからもずっと よろしくね




「緊張しまくったミクの声も聞いてみたいなー」
「もうっ、礼菜ちゃんの意地悪ー!!!」




―ラララ・・・

―I love you




こうして、可愛いVOCALOIDとの生活は続く。




―I love you forever




「実は・・・礼菜ちゃんのこと、ちょっと好きだったりして」
「ん?なんか言った?」
「ううん。何にも」




―So give me your love




「さーて、みーちゃんに贈る歌。次はどんなのにしようかな」
「私も考えよっか?」
「わー!助かる!ありがとーミクー」
「ディスプレイに頬ずりされても・・・」




―to love me forever...




「ずっと一緒に居たいな・・・こんな私にもやさくしてくれる、こんな風な人と一緒に・・・」



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