こなかがSS(15話の冒頭シーンからインスパイヤ)
こなたに誘われて行ったライブ。こなたの誘いだ。当然断るわけもなく、いつもの4人組でライブに行った帰りのこと。
こなたが俯きっぱなしで、何だか様子がおかしかった。気になって声を掛ける。
「どうしたの?・・・祭りの後の脱力感って感じね」
「・・・うん」
帰ってきたのはいつもと少し違う、テンションの低い返事だった。
「・・・そこまで反応薄いと心配になるわよ」
「うーん、何かいつものこなちゃんじゃない感じだね」
つかさも同じ意見のようだ。
「・・・うん」
そういって頷くだけのこなたの顔は、暗くてよく見えなかった。
帰って宿題の残りを済まし、お風呂に入る。その間も頭はこなたの事でいっぱいだった。最近はこなたの事を考えながらでも(作業効率は落ちるけど)勉強できたりする。
「もう慣れて来ちゃったかなぁ・・・」
ちょっぴり寂しい。
「んー?おねーちゃん、何か言った?」
次にお風呂に入るつもりらしいつかさが、ドアの外で言った。たぶん着替えを運んできたのだろう。
「何でもないわよ。所で今何時?」
「んーっとね、あともうちょっとで12時だよ」
「じゃあ今夜のらっきー☆ちゃんねるまでまだ少し時間あるわね」
「でも早く上がってね。おねーちゃんがあんまりゆっくりしてると、私が聞きそびれちゃうかも」
「そんなに心配しなくても。もうそろそろ上がるわよ」
「はぁー、暖まったー」
ホクホクしながら部屋に戻る。らっきー☆ちゃんねるが始まるまでまだ少し時間がある。それまで、最近買ってきたラノベを読んで時間を潰すことにした。そういえばこれも、こなたと「ゲーマーズのポイントが欲しいから」ってつきあわされた時に買った本だっけ。
と、そこへ
「かがみー、こなたちゃんって娘から電話ー」
姉さんの声だ。いや、お母さんだったか?とりあえず、『こなた』という単語を脳が認識した時点で、そんな事はどうでも良くなっていた。気がつくと、もう電話の前にいた。受話器をひったくる様に取る。
「こっ、こなた?」
ま、マズい。息が荒い上に、噛んでしまった。これではバレてしまうのではないか・・・
「あー、もしもし、かがみ?」
いつも通りの声だ。どうやらさっきの言動には気づかれなかった様だ。
「あのさ、今日のライブの時・・・」
「何だぁ?もしかして忘れ物したとか」
言うんじゃ・・・と言いかけたところでこなたの声が耳に入った。
「・・・ありがとね」
「な、ななな何言ってんのよ」
呂律が回ってない!落ち着け柊かがみ!
「わ、私はっ、あんたに何かお礼言われるようなことしてないじゃない!」
今度は声が所々裏返ってしまった。
「んーん、私が前見えなくて困ってたら、席変わってくれたじゃん。私ね、すごい嬉しかった」
この言葉に、私の顔が一瞬で真っ赤になった。
「んなっ、あ、あの位、何でもないわよ・・・あ、そう言えば、こなた。あんた、ライブ終わった後、ずっと俯き気味だったじゃない。あれは・・・どうしたの?」
ずっと疑問に思っていたのだ。こなたの顔がよく見えなくて・・・ちょっぴり・・・切なかった。
「いやー、あれ?ああ、あれはこの事をかがみに言おうと思ったんだけど、何かみんなの前で言うのも恥ずかしくってさぁ」
ふっ、と思わず息が漏れた。
「って事は、この事言うためだけに電話してきたの?」
「うん、そうだけど」
「・・・どう致しまして」
なんだぁ、そんなことだったのか。微笑ましくなる。これが、こなたの・・・魅力なのよね。
「じゃあね、かがみ。もうらっきー☆ちゃんねる始まるよ?」
「あ、いっけない!忘れてた!!」
「じゃーねー」
「うん。ばいばい」
チン・・・
黒電話にそっと受話器を置いた。
さて、ラジオを聴こう。こなたの話についていくためにも。やはり共通の話題があった方が楽しいのだ。
・・・こなたの近くにいるだけで幸せだけど。
そっと目を閉じて、胸の鼓動を感じる。明らかにいつもより早い。でも、今はそれが心地良い。
「おねーちゃん、らっきー☆ちゃんねる始まっちゃうよ!」
突然右手から声がかかった。と、つかさが慌てて脱衣所から出てくる。
「う、うん!そうね」
さあ、今日のらっきー☆ちゃんねるでは、どんなあきら様の話しぶりが聞けるのだろうか。わくわくしながら、私は部屋に戻るのだった。
(ふーん、お姉ちゃんってそんな風にこなちゃんの事思ってたんだ)
かがみには見えないように、つかさは少し口の端を歪めた。
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